2016-01-01から1年間の記事一覧
目が覚めると、みゃうはもう段ボールの箱から出ていた。 どこにいるのかと部屋の中を見回してみると、窓の下の薄日が差し込む辺りに動くものがある。後ろから光を受けて、ふわふわした輪郭が浮き上がっている。 みゃうだ。 起き上がった私を見て、みゃうは、…
それからも、みゃうは毎日のように現れては、部屋のなかで寛いだり餌を食べたりして、また帰っていった。どこに帰って行ってるのかはわからないが、自分の飼い猫な訳でもないので放っておいた。 留守の時には、貢ぎ物も度々置いてあった。気味が悪いものが多…
その子猫は、私を見かけると、私を見上げて、みゃう、と鳴いて、身体を私の足などに擦り付けたあと、その辺を歩き回ることが多かった。 かといって、部屋のなかで騒いだり、散らかすこともなかった。
それから、その子猫との交流が始まった。掃き出しの窓を開けていると、その猫は部屋のなかに入ってくるようになった。パンはあまり好きではないらしかったので、カリカリのキャットフードを買ってきて、いつでも食べれるように部屋のなかに置いた。
その頃住んでいたのは、アパートの一階だった。1Kの簡単な部屋は南向きで、道路から少し入ったところにある部屋の前は、中からはちょっとした庭のように見えた。 その庭のような空間は、町中の連なったアパートの部屋の前であるにもかかわらず、周辺から切り…
このところ、ペットを飼う人が増え、家族のように一緒に生活する家庭が増えているらしい。とくに、猫が人気らしく以前は犬と半々だったのが現在では猫の方が圧倒しているとも聞く。 この猫については、可愛い話や面白い話はもちろん多いが、時に不思議な話を…
ビルの合間を抜けてきた北風に吹かれながら、最近出来た小さな森の前を過ぎる。 この森も、周辺の連続再開発の結果生まれた成果だ。 明治神宮の森は、木が成長した50年後や100年後の姿を想定して創られたものらしいが、ここはどうなんだろうか。その頃には、…
階段を上がりきると、街路樹の並木が迎えてくれる。道路にはカサカサと残された枯れ葉が風に飛ばされていく。 道には朝から多くの車が往来しエンジン音を響かせている。 時々吹く強い北風のなか、歩道には、多分私と同じ類いの人たちが歩いている。 意外と多…
そんな、息の抜けない都会の地下を抜けるために、私は地上を目指す。 確かに便利なのだが、私は、この地下通路があまり得意ではない。
よく「譲りあいの心が大事」というが、ここでそんなものを発揮したりすると、途端に一歩も動けなくなる。 隙あらば入って来る人の列に身動きが取れなくなり、後ろの人に押されたり、悪ければ怒鳴られる。
そんなことを思い出していると、再び車内がざわつき始めた。次の駅ではほぼ半数以上の人が入れ替わる。 私も降りる駅だ。
やがて列車は減速をはじめ、車内はにわかにざわめき始める。 次の駅は、この路線でも乗降客が多い駅のひとつだ。網の目のように都内に張り巡らされた地下鉄では、大抵の場合、目的地までの間に数度の乗り換えをする。 程なくして列車は止まり、開いた扉に向…
私は撫で肩だ。 そのせいか、電車で座るとよく寄り掛かられる。 そしてそれは、大抵体格の大きな男性であり、また多くの場合、ヘッドホンの音やイビキがセットになっている。