ビルの合間を抜けてきた北風に吹かれながら、最近出来た小さな森の前を過ぎる。
この森も、周辺の連続再開発の結果生まれた成果だ。
明治神宮の森は、木が成長した50年後や100年後の姿を想定して創られたものらしいが、ここはどうなんだろうか。その頃には、また周辺の連続再開発を始めるだろうから、この森はそのための種地として計画されているのかも知れない。だとしたら、計画的な都市開発ではあるが、ちょっと残念な気がする。
交差点を渡ってくる人の群れを避けながら歩く。見上げれば、いつもの標識。
そして、街路樹。
見慣れたような景色だけど、季節によって少しずつその姿を変えている。
街自体もまた再開発で姿を変える。
きっと、この世界に永遠不変なものなんてない。
人の心も同じ。私自身も、きっと少しずつ変化している。それで良いのだと思う。
この街路樹も、もう少しして暖かくなると、薄緑色の若葉が芽を出し、街が新緑に包まれる。
その後、雨の季節を迎え、雷と豪雨が過ぎると、黒々と緑が燃える樹々が熱いアスファルトに陰を落とすようになる。
祭りの賑わいが過ぎ、少し涼しい風が吹いたと思ったら、緩い雨が降り、中空に浮かぶ月が輝きを増す頃には、抜けるような青空が街路樹のバックに広がる。
やがて、その街路樹も黄色や赤に彩り始め、街は夕焼け色に染まったかと思うと、冷たい北風が吹き始め、葉の落ちた街路樹には替わってイルミネーションが輝き始める。
この街に来て、もう何度その繰り返しを見てきただろうか。
そして、あと何回見るのだろう。
仕事が変われば、また眺める街の景色も変わる。
そう思うと、見慣れたようなこの街の景色も、少し懐かしいような、愛しいような気になってくる。
いつまでになるか判らないけど、与えられた「今」にだけ見ることが出来るこの風景、もっと大切に、心に焼き付けておこう。
いや、そんな大層なものでもないか。
交差点を渡った人の塊がビルの中に吸い込まれて行く。信号が変わり、横断歩道を過ぎたらもうすぐ会社だ。
また、あの閉鎖的空間で一日の大半を過ごすのだ。
やれやれ。