朝目が覚めると、その気配を感じてサラミがいつものように僕を誘いに来た。
ねえ、散歩に行こうよ、早く行こうよ、まるでそう言ってるかのように、笑顔で駆け回っている。
よし、じゃあ行こうか。
サラミは初めてだよね。
そう。今日はクリスマス・イヴだ。
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ねえ、散歩に行こうよ、早く行こうよ、まるでそう言ってるかのように、笑顔で駆け回っている。
よし、じゃあ行こうか。
サラミは初めてだよね。
そう。今日はクリスマス・イヴだ。
続きを読む東京の雪は、あっという間に溶ける。
どんなに降り続いても丸一日よりは降らないし、次の日は必ずと言っていいほど天気になり、強い陽射しを受けて、大抵はその日のうちにみんな溶けてしまう。
サラミに起こされて町に出ると、昼前なのに、既に雪は大分無くなっていた。
雪解けの町。
まるで一気に冬から春になったように、柔らかな陽射しが町中に降り注ぐ。
いつもの洋食屋の前を通りかかると、奥さんが道路の脇に残った、黒く残った雪を水で流していた。
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その日は、空気は凍りついたように冷たく静かで、空には真っ白な雲が一面に広がっていた。
ちょうど、サラミを小さな庭に出しているときに、空からは白いものが舞い降りてきた。
初雪。
もちろん、サラミにとっては初めての雪だ。
サラミは、空を舞う白いものを不思議そうに眺めて、地面に落ちたものの臭いを嗅いだり、舐めようとしたりしている。
そのうち、地面のあちこちに雪が溶けずに残り始めると、それらを踏まないように、ぴょん、と飛び跳ねて移動しながら、それでも雪の探索をしていた。
面白いので、その様子をしばらく眺めてから、僕らは暖かい部屋に入った。
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サラミと暮らし始めてから、僕は残業もせず、飲みにも行かないで、速攻で帰宅する生活になった。
サラミがまだ小さかったこともあったけど、何よりサラミと一緒にいたかった。
家に帰ると、玄関まで迎えに来たサラミを連れて散歩に出た。
まだ暑さの残るなか、蝉時雨を聞きながら歩いた夏の日。
少しずつ日が早くなり、夕暮れまでの空の色の変化を一緒に見上げた夏の終わり。
少しずつ涼しくなり、色とりどりの花の中を駆け抜けた初秋。
稲刈りも始まり、風に揺れる黄金色の稲穂の中で過ごした秋。
紅葉に燃える公園を歩き、木枯らしの吹き始めた並木道を歩いた。
そうして、いつも一緒にいた。
そして、いつも一緒に歩いた季節が流れて行くのを眺めていた。
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目覚ましよりも早く、僕はサラミのペロペロ攻撃で目が覚めた。
そうだ。散歩に連れてかなくちゃ。
外はすでに明るく、早くも夏の暑さが始まりつつあった。
やたら走りたがるサラミをなだめつつ、僕はあくびをしながら、まだ動き出したばかりの町を歩いた。
遅めの新聞配達のバイクや、牛乳配達のバイクが通りすぎて行く。
早出のサラリーマンが小走りに駆けて行く。
まだ車の少ない通りは、散歩するにはちょうど良かった。
しかし、すでにじりじりと強い陽射しが町に降り注いでいる。
今日もまた、暑くなりそうだ。
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