2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧
取り敢えず、午前中の仕事が一区切りついたので、外に出ることにした。私は、出来るだけこの閉鎖的空間から逃れたいので、何かに理由をつけて外に出るようにしている。といっても、そうそう理由なんて無いのだけれど。
「みゃう、ただいま」 部屋に戻ると、いつもなら玄関までお迎えに来るのだが、今日はいない。 「みゃう?」 中に入り、部屋の中を見渡してみた。 …いた。 みゃうは、掃き出しの窓の下で、窓を伝う雨の滴を夢中で追いかけていた。 (番外編)
病院から戻ると、珍しく大家さん夫婦がアパートの前に来ていた。 どうやら、新しく入居する人の部屋を確認していたらしい。 挨拶をすると、奥さんからは元気な声が、大家さんからは相変わらずの控え目な笑顔が返ってきた。 私は、先日見た不思議な猫の話をし…
みゃうがいない夏は、あっという間に過ぎていった。 秋になり、次第に木々の葉が色づき、風に舞う様子を、誰もいない部屋の中から眺めた。 やがて、冬枯れの木々を冷たい北風が揺らすようになっても、それは変わらなかった。 そして、季節は流れ、また、春が…
それから、一瞬だけ、意識が飛んだように思う。 気がついたら、部屋の中には、カーテンを透して薄明かりが差し込んでいる。 目の前には、静かにうずくまるみゃうがいた。
タオルでくるんだみゃうを抱いて、アパートの部屋に入った。 その途端、堪えていたものが溢れだした。 みゃうを抱き、立ち尽くしたまま、私は動けずにいた。 ただ、涙だけが流れ落ちて行く。 頬をつたった涙が、みゃうの上に落ちる。 みゃうが、みゅ、と、小…
なんで…? 様々な思考が交錯して、どうしたらよいのか判断できずに、そのまましばらくしゃがみこんでいた。 目の前では、相変わらずみゃうがうずくまっている。 そうだ。病院に連れていかなきゃ。
その日は、夏も後半に差し掛かった、よく晴れた金曜日だった。 昼間の強い日差しも緩んだ夕方、繁華街へと向かう仲間の誘いも緩く断り、家への道を急いでいた。 途中、少し食欲が落ちたみゃうのために、猫缶などを買うのは忘れなかった。 涼しくなった風が心…
その日は少しワクワクした気持ちで歩いていた。 今朝のようなこともあるかと思い、帰りに寄り道して猫用のトイレなどを買い込んできたのだ。 これでまた少し、みゃうの飼い主に近付いたような気がして、楽しいような、嬉しいような、なんだかバカみたいだけ…
戸を開けて、中に入ろうとすると、何かが足元をすり抜けた。 みゃうだ。 私は慌てて扉を閉めた。 今の様子を奥さんに見られてないだろうか。そう思うとドキドキだった。 「おまえ、どこにいたんだよ」 今まで、その辺の茂みにでも隠れていたのだろうか。それ…