タオルでくるんだみゃうを抱いて、アパートの部屋に入った。
その途端、堪えていたものが溢れだした。
みゃうを抱き、立ち尽くしたまま、私は動けずにいた。
ただ、涙だけが流れ落ちて行く。
頬をつたった涙が、みゃうの上に落ちる。
みゃうが、みゅ、と、小さく鳴く。
どうして…!
そのまま部屋のなかにしゃがみこみ、みゃうをくるんだタオルに顔を埋めて泣いた。
ほかに誰もいない部屋の中でひとしきり泣いたあと、私はみゃうを下におろした。
そうだ。できるだけのことをしよう。
まず、みゃうの段ボールの箱を、出入りしやすいように下まで切り取った。
そして、先日買い込んであった猫用の餌の中から、柔らかそうなものを探し出した。
みゃ…。
みゃうのところに戻ると、みゃうが顔を上げた。
急いで缶詰めのふたを開けて、スプーンで少しだけすくってみゃうの口元に運んだ。
みゃうは、スプーンの中の汁を数回だけ舐めた。
みゃ。
そう言うと、みゃうは、再び頭を下ろした。
みゃうの背中に、そっと手をあてる。
呼吸が荒い。
それが手のひらから伝わってくる。
みゅ…みゅう…
時々、苦しそうにみゃうが声をあげる。
ほかに誰もいない部屋のなかで、息苦しい濃密な時間が流れてゆく。
ふいに、みゃうがまた身体を起こした。
みゃうは、そのまま立ち上がり、よろよろと歩き始める。
どこへ…?
ふと、動物は死ぬ間際に飼い主の元からいなくなるという話を思い出した。
でも、ただ見ていることしかできなかった。
しかし、みゃうは段ボールの箱から少しだけ歩いて、またそこにうずくまった。
明らかに呼吸が荒い。
再びみゃうの身体に手を当てた。トクトクと伝わる心臓の鼓動が驚くほど速い。
私は、真新しいタオルを持ってきて、みゃうをその上に寝かせ直した。そしてまた、みゃうに手をあてる。痛みに耐えているのか、時々、身体が強ばるのがわかる。
みゃう、ここにいるよ。
そばにいるからね。
静かな部屋の中には、みゃうの荒い呼吸と、息を殺した私の心臓の音だけが響いているように感じた。
そして、また、みゃうが、みゃう、と、小さく鳴いた、ような気がした。