目覚ましよりも早く、僕はサラミのペロペロ攻撃で目が覚めた。
そうだ。散歩に連れてかなくちゃ。
外はすでに明るく、早くも夏の暑さが始まりつつあった。
やたら走りたがるサラミをなだめつつ、僕はあくびをしながら、まだ動き出したばかりの町を歩いた。
遅めの新聞配達のバイクや、牛乳配達のバイクが通りすぎて行く。
早出のサラリーマンが小走りに駆けて行く。
まだ車の少ない通りは、散歩するにはちょうど良かった。
しかし、すでにじりじりと強い陽射しが町に降り注いでいる。
今日もまた、暑くなりそうだ。
ふと、昼間のサラミが気になった。
きっと暑いよな。
外に出しておいても、日陰がないと。
一瞬迷ってから、決めた。
エアコン点けていこう。
な、サラミ。
呼ぶと、サラミは嬉しそうに僕を見上げた。
よし。今日は早く帰ろう。
町は少しずつ朝の活気を取り戻していた。
仕事が終わると、僕は挨拶もそこそこに猛ダッシュで会社を飛び出した。
家に帰ればサラミが待っている。
電車を降りると、僕は、サラミ、サラミ、と、リズムを取りながら早足で家に向かった。
もしかしたら、声に出ていたかもしれない。
もし、そうだって構わない。
家で、誰かが待ってるのが、こんなにうれしいものだなんて。
サラミ、ただいま!
ワクワクした気持ちで玄関のドアを開けると、サラミが全力で駆けてきた。
そして、あそんて、あそんで、とジャンプする。
そのサラミを抱き止めて、ハタと部屋の中の様子が目に入った。
サラミは、思った以上にやんちゃだった。
玄関のサンダルには、たくさんの噛み痕が付き、一部が取れかかっている。
隅に寄せてあったはずの雑誌や広告が食いちぎられて部屋中に広がっている。
カーテンでも遊んだようで、下の方がほつれていた。
あーあ、どうすんだよ、これ。
良く見ると、開けてあった襖の下の方にも歯形がついている。
大家さんに何て言おうかな。
取り敢えず、ひとつ、ひとつ、これはダメだよ、とサラミに言い聞かせてから、僕たちは夜の散歩に行くことにした。