前夜の予報からは打って変わり、空には青空が広がっていた。
山の中で迎える朝は、まさに凛とした少し張り詰めたような清々しい空気に包まれ、これから山に向かう選手たちの気持ちを更に引き締めるようだった。
スタートとなる境内には、これより50kmを越える旅に出る選手と、それを送り出す僧侶で溢れんばかりだった。
そう。今日はトレイルランニング大会。この名刹も、今朝だけはこれから始まる特別なレースのスタート地点として、早朝から普段にはない静かな熱気に包まれていた。
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彼と過ごしたのは、子供が増えて教室が足りなくなり、町の予算が間に合わないために本設として使われていたプレハブの校舎だった。気温などは教室としての基準を満たしていたらしいが、実際には、輻射熱で夏は暑く、熱放射で冬は寒かった。
続きを読む砂場の側には鉄棒や雲梯があった。どちらも最初はぶら下がっている事さえ出来なかったが、どちらも何かのきっかけで楽しくなった。それこそ、身体の使い方のイメージが閃いたのだろう。それからはクラスの中でも得意な方に入った。
続きを読む新体育館の隣には、取り壊しや移設を免れた慰霊塔があった。
その慰霊塔は、大きな石を積んだような小山の上にあって、周囲よりも少し高いところに建てられていた。塔の周りは大きな樹木に囲まれていて、その一郭だけは元々沼地だった校庭とはまた違う世界を創り出していた。朝は鳥たちが集まって歌い、夏には蝉時雨が辺りを包んだ。
続きを読む子供の頃はというと、色々な事がすべて新鮮で、すべてが興味の対象だった。すべての事が色鮮やかに飛び込んできて、それらは未だに記憶のどこかに残っている。時間の経過もゆっくりで、あの僅か5分の休み時間にも、よくまあ遊びまくったものだと思う。
続きを読むふと脇を見ると、高校生だろうか、参考書のようなものを広げて試験勉強をしている。
試験勉強といえば暗記だが、私は暗記をすることがとても苦手だ。しかし、人に言わせると、私は色々なことをよく覚えているという。
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