レースから1ヶ月。
私は固定された足で歩いていた。
病院の診断は、剥離骨折。
全治2ヶ月らしい。
この足でよく走りきれたものだと、つくづく思う。
その後のレースは、当然すべてDNS(Do not start)となった。
しかし、本当に貴重な経験ができたと思う。
中でも、怪我の後に見た、白い大きな背中の後ろ姿。
夢か現か、もしかしたら痛みのために見た幻覚だったのかも知れない。
でも、それもいい。
私にとっては同じことだ。
完走できた理由も、あの白い背中が導いてくれたからなのか、或いは骨折の影響で多量にドーパミンが分泌されたからなのか。
それも、どちらでもよかった。
空を見上げながら考える。
足が治ったら、また、山へ行こう。
そして、いつか、あの背中に追い付けるだろうかと。
(連続ツイート小説「トレラン編:Kobo trailの章」完)