駆け抜ける森 見上げた空

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Kobo Trail 編 ⑬最終区間

 日没間際の陰り行くロードの先に、エイドらしきものが見える。

 あれが天狗木峠のエイドか。

 見えるのになかなか近付けないもどかしさの中で、もがくようにして進む。

 

 到着。

 時刻は18:45、関門閉鎖の15分前。

 お疲れさま、もうすぐですよとスタッフの方が声を掛けてくれる。

 そう。ゴールまではもうすぐだ。

 しかし、時間もない。

 

 すでに身体が受け付けなくなっていた甘いスポーツドリンクを捨て、水に入れ換える。

 レース終盤には、何故か甘いものが口に入れられなくなるのだ。

 幸い、ゴールまでは残り約7kmだ。

 糖分を摂らないことによるガス欠(エネルギー不足)で走れなくなる心配も、まずない。

 ボトルを水で満たし、ヘッドライトを装着すると、夕闇迫る中、ゴールへの最終区間へと足を向けた。

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 太陽が遠い山並みの向こうへと近付くのを横目で見ながら、残り時間でゴールするために必要なスピードを計算する。

 現在、18:50少し前。

 残り7kmで70分。

 ここからは、基本下りのロード(舗装道路)だ。

 普通なら、歩いてでも行けるはず。

 全身の筋肉は、すでに限界を超えてギシギシと傷んでいた。

 

 出来ることなら、もう、これっぽっちも走りたくない。

 そこで、試しに歩いてみた。

 今、出来る限りの全力歩行。

 

 少し歩いてから、腕に着けたGPS時計で計測したペースを確認する。

 結果、1kmあたり13分。

 

 くうっ。

 間に合わないじゃないか。

 

 仕方なく、最後の力を振り絞って走りだす。

 林の向こうでは、太陽が空を赤く染めながら、今日最後の光を投げかけている。

 その様子を横目で眺め、写真を撮りたい衝動に駆られながらも走り続ける。

 

 でも、と足を止める。

 一枚だけ撮影。

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 太陽と、地平線の赤から上空の青までグラデーションに染める空をバックに、手前の木々をシルエットで浮き上がらせた様子をスマートフォンのカメラに収める。

 そして、ちゃんと撮れてるかは確認せずに再び走り出す。

 上手く撮れてなくても、撮り直している時間はない。

 

 緩い坂道を駆け降りながら、腕の時計でペースを確認する。

 1km約8分…。

 

 参ったな。

 このペースでも8分かかるのか。

 

 ふうっ、と見上げると、道の両側に立つ木々に囲まれて、夕暮れの青く深い空が見える。

 その空に届く、淡く透明な光が、次第に色を失ってゆく。

 それと代わって、ヘッドライトの灯りがその輝きを増し、曲がりくねった薄暗いアスファルトの坂道を照らし出す。

 

 坂道は徐々に勾配を増し、もはや力の入らなくなった膝に、更にダメージを与える。

 何度走っても、レース終盤の下りはきついものだ。