日没間際の陰り行くロードの先に、エイドらしきものが見える。
あれが天狗木峠のエイドか。
見えるのになかなか近付けないもどかしさの中で、もがくようにして進む。
続きを読む林道だ。
ここまで来れば、もう険しいトレイルはない。
さあ、ぶっ飛ばすぞ。
実際には、ぶっ飛ばすと言うには程遠いスピードだが、平坦な分、確実に速い。
淡々と進んで行くと、前方のランナーに追い付いた。
続きを読む紀和隧道上のチェックポイントに着くと、そこにいた長身の男性か私を見て笑顔を見せた。
序盤、転倒した時にお世話になったスイーパーの方だ。
「君がここまで来てくれてよかったよ」
そう言う彼にお礼を言いつつ、時間を確認する。
「ぎりぎりですか」
「ぎりぎりだね」
続きを読むこのレースでは、天辻峠から先は、エイドの通過に対して関門時刻が設定されている。
最初の関門になる、ここ天辻峠の関門時刻は16:00だ。
しかし、昨日のブリーフィングでも説明があったとおり、関門時刻をギリギリに通過したのでは、まず時間内の完走は難しい。
エイドに着いた私は、すぐに時計を確認する。
続きを読む森の中のトレイルをアップダウンしながら更に進んでいくと、ロープが掛けられた斜面が続く険しい道に出た。
このコース最大の難関、「乗鞍の壁」だ。
最大斜度が40度を越えるとロープがつけられると聞いたことがある。
その、まさに崖のような斜面を、何本ものロープを伝って登る。
よく、山ではロープに頼らず脚の力で登れと言うが、今はそんな事は言ってられない。
リスクは承知の上で、全体重をロープに預け、痛む足を庇いながら全身の力を振り絞って登る。
握力がなくなってきた頃、果てしなく続きそうな崖の道もロープのない緩い登りに変わり、そして、ようやくその頂が見えてきた。
続きを読む一人抜き、また、一人抜いた。
道は一度大きく下ってから天狗倉山への登りに差し掛かる。
そうしているうちに、あることに気がついた。
足の着き方さえ間違わなければ、それ程痛くない。
もちろん、間違えれば激痛が走るが。
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