駆け抜ける森 見上げた空

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Kobo Trail 編 ⑪スイーパー

 紀和隧道上のチェックポイントに着くと、そこにいた長身の男性か私を見て笑顔を見せた。

 序盤、転倒した時にお世話になったスイーパーの方だ。

 「君がここまで来てくれてよかったよ」

 そう言う彼にお礼を言いつつ、時間を確認する。

 「ぎりぎりですか」

 「ぎりぎりだね」

 

 ここまで来て、ようやく先が見えてきた気がした。

 嬉しさで、不意に涙が出そうになる。

 しかし、安心するには早い。

 残りは約13km。

 時刻は17:15、関門閉鎖の15分前だ。

 スタッフの方と、スイーパーの方に礼を言い、最後のトレイル区間に向けて出発した。

 

 ここから最終関門の天狗木峠までは約6km。

 大きく分けて、前半は険しいトレイル、後半は未舗装の林道だ。

 エイドを出ると、まもなく狭く急な登りに差し掛かる。

 これまでに登った坂に比べて特別険しいわけではないのだが、幅が狭く、掴まるところがない。

 しかも、両側は有刺鉄線だ。

 ブリーフィングで、注意して登るようにと言われた所だ。

 地面に掴まりながら何とか登っていると、スイーパーの方が後方から追い付いてきた。

 

 「お先に」

 少しの間、彼は後ろで様子を見ていたが、すぐに苦戦する私の脇を悠々と追い越して行った。

 

 再び一人になった私は、黙々と斜面を登る。

 そう、がっかりしている場合ではないのだ。

 彼に置いていかれたので、時間が危ないのではと一瞬考えたが、そんな筈はない。

 今は自分が最終ラインなのだ。

 違ったって、これ以上速くなんて出来るもんか。

 

 しかし、この時すでに全身の筋肉が悲鳴をあげていた。

 もはや、痛みは感じない。

 そこら中の筋肉が発熱し、まるで熱中症のように頭がぼーっとしていた。

 少し気持ち悪い。

 

 それでも進み続け、有刺鉄線の斜面を越え、幾つかの山を越えると、ようやく少し広い道に出た。