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駆け抜ける森 見上げた空

ツイッターで掲載中の『連続ツイート小説』おまとめサイトです。

「みゃう」⑧予兆

『みゃう』~子猫物語~

その日は少しワクワクした気持ちで歩いていた。

今朝のようなこともあるかと思い、帰りに寄り道して猫用のトイレなどを買い込んできたのだ。

これでまた少し、みゃうの飼い主に近付いたような気がして、楽しいような、嬉しいような、なんだかバカみたいだけど、そんな気分だった。

 

 

アパートの前まで来ると、大屋さんが車を磨いていた。そういえば、大屋さんって、ここで車の手入れをするんだっけ。

 

無口な職人気質で、一見怖い印象の大屋さんは、大の車好きだった。

趣味でメカニックをしていた経験もあるらしく、車のことで話し掛けると嬉しそうに話をしてくれる。

 

「こんばんは」

無視して通りすぎるのも却って怪しく思われると思い、声を掛けることにした。

猫用トイレなどの袋の手を背中に回して。

 

大屋さんは私を見て、一瞬だけニコッとした。

そして、すぐまた車を磨く作業に戻った。

私は軽く会釈して通りすぎた。

「第一関門突破!」

そうつぶやくと、私は怪しくない程度に急いで部屋に入った。

 

「みゃ」

私が戻るのを待ってたのか、扉の音を聴いてみゃうがトコトコと歩いてきた。

そして、足元に身体を擦りつける。

「ただいま、みゃう」

呼び掛けると、みゃうは再び、みゃ、と鳴いて部屋に戻って行った。

 

部屋に入ると、私は袋から猫用トイレを取り出し、部屋の奥のみゃうの箱の横に置いた。

「みゃう、ここがトイレだよ」

みゃうは、物珍しそうに猫用トイレの臭いを嗅いだりしている。

そして、探索は済んだのか、カリカリの餌を少しかじってから、よいしょ、っと箱に入った。

 

朝起きてみると、みゃうはまだ寝ていた。

みゃうも寝坊することがあるんだな、と思いながら、カリカリの餌を追加して、水入れを洗って新鮮な水に入れ換えた。

「みゃう、行ってくるよ」

まだ眠るみゃうに小声で話しかけて、私は家を出た。