駆け抜ける森 見上げた空

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「みゃう⑭エピローグ

病院から戻ると、珍しく大家さん夫婦がアパートの前に来ていた。

どうやら、新しく入居する人の部屋を確認していたらしい。

挨拶をすると、奥さんからは元気な声が、大家さんからは相変わらずの控え目な笑顔が返ってきた。

私は、先日見た不思議な猫の話をしてみることにした。

もちろん、みゃうのことは出さず、昔仲が良かった猫の話として。

「ああ、聞いたことあるわよ」

元気な声で奥さんは答えた。

「動物って、死んだあとに、一番会いたい人のところに、一度だけお礼を言いに出ることができるらしいわよ。うちの犬も、旦那のところに出たって」

奥さんは、なんで私じゃなくて旦那なのかしらね、と言いながら大家さんの方を見た。

「でも、それにしても不思議ね」

奥さんは続けた。

「私が聞いた話だと、大抵は死んでから一年くらいで来るらしいけど」

奥さんは私を見た。

「その猫はのんびり屋さんだったのかしらね」

奥さんは、よいしょ、っと腰に手をあてて背中を伸ばした。

大家さんは、車の脇で煙草を吸いながら笑って空を見上げていた。

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(「みゃう」猫の恩返し編 完)