駆け抜ける森 見上げた空

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プロローグ①

私は撫で肩だ。

そのせいか、電車で座るとよく寄り掛かられる。

そしてそれは、大抵体格の大きな男性であり、また多くの場合、ヘッドホンの音やイビキがセットになっている。

 今朝はその両方が両側から迫ってくる。

どうすれば良いのか、困ったものだ。

そう言えば、仕事の場面などでも腹が立つことがある。言いたいことを、すべて言い切ってしまえばその時は楽になるけれど、後が大変なことになるから大抵の場合は腹に溜め込むことになる。

やれやれ。

 

ふと窓の外を見ると、ちょうど先程まで雨を降らせていた雲の合間から太陽の光が差してきたところであった。

この神々しくもあるこの様子は、そこにある風景を威風堂々としたものにも感じさせ、まさに天地創造といった様を呈しており、また格別なものである。

ある人に聞くと、この雲間から射し込む光の筋のことを「天使の梯子」だと言う。その言葉もまた心地好いではないか…。

きっと深田久弥ならこの風景をみてこんなことを言うんだろうとか考えていると、窓の外が闇に閉ざされる。

地下に潜ったのだ。

東京の町は、意外と起伏が大きい。そのせいで、初期に造られた地面から浅いところを走る地下鉄は、地下鉄と言いながら度々地上に出る。「○○坂」と名の付いた坂が多い歴史的な地形を身近に感じる瞬間だ。最も、毎日のように乗っていると、そんなことは微塵も感じなくなるのだが。

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