駆け抜ける森 見上げた空

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サラミと僕と ⑦居心地の良い場所

 サラミと暮らし初めて、4ヶ月が過ぎた。

 足が太いから、立派な犬になるね、と言われていたけど、実際には足だけが伸びず、胴長短足な「立派な犬」になった。

 先日の一件があってから、外でも飼えるように、僕はサラミと一緒に大家さんやご近所に挨拶に回った。

 どんな反応をされるか不安だったけど、当のサラミと一緒だったせいか、案外反応は良好だった。

 相変わらずサラミは誰彼構わず愛嬌を振り撒いていたので、番犬にはならないね、とか言われながら撫でられたりしていた。

 かくして、小さな庭でもサラミを飼えることになった。

 

 

 僕の帰りが遅くなりそうな日のほかにも、天気がいい時などは、僕のアパートの小さな庭にサラミをに出すことにした。

 サラミは、どこか自分は人間だと思ってる様なところがあって、普通に家の中へ入ってくるけど、居心地がよければ外でも構わない様だった。

 そして、サラミは居心地が良い場所を見つけるのが得意だった。

 僕の小さな庭には、落ち葉が吹きだまりになる場所があった。

 そして、冬になると、その辺りは木陰がなくなり、緩やかな陽射しが日溜まりをつくる。

 その、よく乾いた枯れ葉のクッションの上が、サラミのお気に入りだった。

 だから、枯れ葉の吹き溜まりは、大家さんが片付けるまでそのままにしておいた。

 僕は、晴れた休みの日には、よく洗濯物を外の物干し竿に干している。

 その日は朝から強い風が吹いていた。

 部屋のなかで一仕事終えて見ると、風で落ちた洗濯物の上で、サラミが気持ち良さそうに尻尾を振っていた。

 

「あら、最近見かけないと思ったら、こういうことだったのね」

 休みの日の午前中、サラミと街を歩いていて、不意に声を掛けられた。

 振り返ると、以前よく行っていた洋食屋のおかみさんが、店を開く支度をしていた。

 そういえば、サラミと暮らし始めてから来ていなかった。

 この店は、決して洗練された美味しいものではないけど、でも、家庭的な料理と、何故かゆったりとした安心感、そして何より安いことから、何気に人気があった。

 僕も、時々ふらっと来てはコーヒーを飲んだり、或いは食事をしたり、時々は何時間も考え事をしたりしていた。

 そんなわけで、この店のマスターとおかみさんはとは顔馴染みになっていた。

 それが、この数ヶ月来ていない。

 おかみさんにサラミを紹介し、たまには顔出しなさいよとか言われながら、洋食屋を後にして、僕たちは近所の公園へと向かった。