やがて、周り中の世界を黄金色に輝かせていた夕陽が、遠い町並みの向こうへと消えて行き、その最後の赤い光が届かなくなると、辺りは夜の街へと姿を変えていった。
黄金色に輝く奇跡の時間は、日没と共に終わりを告げ、風も治まった園内は、静かな空気に包まれていた。
ポツポツと街頭に照らされた部分だけがまるでスポットライトを浴びたかのように浮かび上がっている。
時折、緩やかな風が道の上の落ち葉をかさこそと音をたてる。
その中を、二人並んで歩いた。
「今日はたのしかったな」
「そうだね」
「うん。来てくれてありがとう」
今は地面に降り積もった落ち葉たちを踏みしめながら歩く。
親子連れも、犬を連れた老人も先に帰ったのか、誰もいない園内を入り口までゆっくりと歩いた。
「また、あえる?」
「また、会おうね」
「わかった」
そう言うと、彼女は笑顔で、胸元で小さく手を振った。
「駅まで送るよ」
「うん、大丈夫」
また連絡するね、と言うと、彼女はネオン眩しい人混みの中へと消えていった。
振り向きもせず歩いて行く彼女が見えなくなると、急に周囲の音が大きくなったような気がした。
街の雑踏。
車の行き交う音。
ふう、と息をついて空を見上げる。
東京の街中からは、星は殆ど見えない。
微かに見えるのはオリオン座だろうか。
また、一人、か。
いや、いつもの日常に戻っただけ。
さあ、帰ろう。
彼女の空気感が残る公園を背に、私は足を踏み出した。
望む未来へと繋がっているはずの明日へと、毎日を繋いでいくために。
(連続ツイート小説「ゴールデン・ダスト」完)