次の瞬間。
突然、強い風が吹いた。
「え…」
地面に積もっていた落ち葉が舞い上がり、枝に残っていた葉は一斉に樹々を離れ宙を舞う。
折からの夕陽に照らされて、空中で輝く黄葉。
ゴールデン・ダスト。
銀杏のゴールデン・ダスト。
「わあっ」
オレンジ色に煌めく世界で、夢のように空中を舞い降りてくる黄色い葉の数々を、二人で見上げていた。
「すごいっ」
「凄いね」
彼女は少しだけ駆け出し、そして、くるくるっと回った。
「あはっ
見れちゃったね」
彼女は回るのをやめて私を見た。
「あなたといると、色んなものが見れるね」
彼女は今、舞い降りる銀杏の葉のなかで周りの風景と一緒になって輝いていた。
オレンジ色の透明な夕陽が、彼女を優しい色に染め上げる。
「また、見れるといいな」
舞い降りる銀杏の葉と夕陽の光で周りの世界から隔離されたような空間。
今は、そこに二人だけ。
このまま、この世界に閉じ込められてもいい、そう思った。
そして、柔らかな輪郭に縁取られて、夕陽の色に染まる彼女を、私は素直に美しいと思った。