林道だ。
ここまで来れば、もう険しいトレイルはない。
さあ、ぶっ飛ばすぞ。
実際には、ぶっ飛ばすと言うには程遠いスピードだが、平坦な分、確実に速い。
淡々と進んで行くと、前方のランナーに追い付いた。
エイドまで、もう少しですね。
そう声を掛けて追い越す。
前を見ると、その前にも、その前にも、たくさんの選手が林道と格闘している。
ロングの選手なのかショートの選手なのか分からない。
でも、ゴールも制限時刻も一緒だ。
追い付く度に声を掛けていく。
エイドまであと2kmですよ。
エイドに間に合えば何とかなりますよ。
声を掛けた反応は様々だった。
黙って頷く人。
ありがとうございますと答える人。
中には、まだそんなにあるの、と叫ぶ人もいた。
そう。
次のエイド、天狗木峠の関門にさえ間に合えば何とかなるはず。
そして、多分、私がギリギリ。
その私に抜かれた人は厳しいだろう。
でも、ゴールしたい気持ちは変わらないはず。
そう。
みんなでゴールしよう。
私に抜かれても、何とか間に合ってほしい。
そんな思いで次々と抜いていく。
薄暗くなってきた林道の登りが少しきつくなり、時々歩きを混ぜながら進むと、舗装道路に出た。
林道を抜けたのだ。
この先が最終エイドだ。