駆け抜ける森 見上げた空

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Kobo Trail 編 ⑩関門を超えて行け

 このレースでは、天辻峠から先は、エイドの通過に対して関門時刻が設定されている。

 最初の関門になる、ここ天辻峠の関門時刻は16:00だ。

 しかし、昨日のブリーフィングでも説明があったとおり、関門時刻をギリギリに通過したのでは、まず時間内の完走は難しい。

 エイドに着いた私は、すぐに時計を確認する。

 

 時刻は15:30。

 関門閉鎖の約30分前だ。

 おそらくギリギリだろう。

 しかし、林道を粘って走りきったお蔭だろうか、足の負傷の後、初めて時間を短縮した。

 行けるかも知れない。

 ボトルに水を補給し、補給食として置いてあった柿の葉寿司をポケットに入れると、早々にエイドを後にした。

 ゴールまでは、あと20km。

 次のチェックポイント、出屋敷峠まではあと2km、関門時刻は16:30だ。

 

 出屋敷峠までは、ほぼ下りのコース。

 ここはただのチェックポイントなのだが、小さな机の上には、少量の水と、コールドスプレーが置いてあった。

 スタッフの方にことわって、熱を持ち悲鳴をあげ始めていた脚と、負傷した足首を存分に冷却する。

 

 よし。

 まだ行ける。

 

 熱を取り除いた脚は、さっきまでの疲労と痛みを一時的に忘れ去り、次のエイドに向けて加速する。

 

 程なく、数人のグループに追い付く。

 しかし、少しだけ雰囲気が違う。

 見ると、同時に開催されているショートの部「D to K」の選手とスイーパーのグループだ。

 苦しそうに必死で歩く数人の選手と、それに寄り添うスイーパー。

 その彼等に声を掛けつつ、一人先に進む。

 

 そこからは、ロングとショートの選手が混じり合い、何人の選手を追い抜いたのか分からなくなる。

 でも、今重要なのは時刻。

 次のチェックポイントまで、もう少しだ。