武士ヶ峰のエイドに着くと、まず、小山の手前にリタイア予定者がいることを伝えた。
スタッフの方が、お疲れ様、ありがとうございますと言って地元の特産品らしい素麺を差し出した。
別のスタッフが、救助のために山の中へと向かう。
さっきまでリタイア寸前だった自分が、他の選手の救援を伝えている。
どこか不思議な気分だ。
時計を見ると13:55、約35分の遅れ。
しかし、事前の情報によれば、この先3km弱は林道のはず。
私はスタッフの皆さんに礼を言うと、武士ヶ峰のエイドを後にした。
エイドを出ると、想定どおりの林道が続く。
森の中をゆく変化に富んだトレイルと違い、景色の変化もなく木陰のない林道は、ともすれば疎まれがちだ。
しかし、今の私にとっては、走りやすくとても有り難い。
元々、ロード出身の私は、レース中の林道はタイムの稼ぎ所だ。
ここでも、少しでもタイムロスを減らすために、可能な限り走る。
もちろん、足の付き方には十分注意して。
見上げれば、空からは強烈な太陽が降り注ぐ。
思えば、天気予報は雨だった。
それが、昨日の護磨焚きの祈祷で蔵王権現様への祷りが通じたのか、見事に晴れ渡っている。
暑すぎるくらいだ。
今朝、宿を出る直面に服を夏仕様に変えて正解だった。
炎天下の中、延々と続く未舗装林道。
道の分岐もないけど、案内板もない。
これ程長い区間コースを示すリボンがないと少々不安になる。
しかし、迷ってる時間はない。
分岐には必ずリボンや標識があるというブリーフィングでの説明を信じ、とにかく走り続ける。
手元の時計で3kmほど進んだ所で、スタッフの方が森の中へ続く道へ誘導してくれた。