駆け抜ける森 見上げた空

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Kobo Trail 編 ⑦壁を越えろ

 一人抜き、また、一人抜いた。

 道は一度大きく下ってから天狗倉山への登りに差し掛かる。

 そうしているうちに、あることに気がついた。

 足の着き方さえ間違わなければ、それ程痛くない。

 もちろん、間違えれば激痛が走るが。

 

  辺りにはツツドリの声が響いている。

 ツツドリと言えば、この時期、5月から6月にかけて、高尾連山の城山付近でよく鳴き声を聞く鳥だ。

 ホホ、ホホ、という独特なその声は、小さいながらも静かな山の中によく響く。

 ああ、ツツドリってこの山にもいるんだな。

 そんな事を思いながらも進む。

 また、一人抜いた。

 

 天狗倉山を下ると、直ぐにコース第二の壁、高城山(たかぎやま)の斜面に差し掛かる。

 一人の選手の背中が迫ってくる。

 見ると、昨夜同じ部屋に泊まった相部屋仲間だ。

 彼を追い抜くのも気が引けたが、一緒に潰れる訳にはいかない。

 このレースでは、ほば間違いなく私がボーダーラインだった。

 その私に追い越された彼の前途は明るくない。

 しかし、そんな想いを絶ちきるように、ストックを両手に悪戦苦闘する彼にゴールで会いましょうと声を掛け、急斜面を追い越す。

 これで8人。

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 高城山を下ると、一人の選手が立ち止まって食料を補給している。

 声を掛けると、動けなくなったのでリタイアを考えているという。

 おそらく、目の前の小山を越えれば次のエイド、武士ヶ峰だ。

 救助は不要との事だったので、あと少しですよと彼を後にする。

 これで9人。