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駆け抜ける森 見上げた空

ツイッターで掲載中の『連続ツイート小説』おまとめサイトです。

「少年時代」③鉄棒の大技

 砂場の側には鉄棒や雲梯があった。どちらも最初はぶら下がっている事さえ出来なかったが、どちらも何かのきっかけで楽しくなった。それこそ、身体の使い方のイメージが閃いたのだろう。それからはクラスの中でも得意な方に入った。 

  中でも鉄棒は、最初はまるっきり駄目だった。逆上がりなど、どうしたら身体が鉄の棒に上がるのか、全く理解できなかった。しかし、何かのきっかけで閃いてからは、面白いように上がれるようになった。

 これが始まりで、ついには鉄棒の大技を身に付けるまでになった。

 

 この大技は、当時「グライダー」と呼んでいたもので、鉄棒の上で、鉄棒を掴んだ手を跨ぐように足を掛けて乗り、そのまま後方に回転して、最後は前方に飛んで着地するという、ちょっとした、体操競技の鉄棒の技っぽいもので、出来ると、ちょっとカッコ良かった。

 ただ、この技は閃いたのではなく友人から教わったものだった。といっても、手取り足取りとか、理屈ではなく、それこそ「閃く感覚」そのものを教わった感じだった。

 

 その友達は、勉強はあまり得意な方ではなかったけど、運動神経は抜群だった。

 休み時間に、グライダーをカッコよく決める彼に「凄いね」と言ったら、「教えてやるから、うちに来いよ」と言ってくれたので、誘われるままに行って見ることにした。

 彼の家は、私たちの住む団地からは少し離れた森のなかだった。家の前にある小さな広場には、一台の大きな鉄棒があり、木漏れ日が柔らかく差し込んでいた。

 その鉄棒で、彼と、彼の弟が交互に飛んで見せてくれた。「お前もやってみろよ」と言うので、今度は自分が上がってみる。「最初は片足でやるんだ」と言われ、恐る恐る鉄棒の上に片足を掛ける。

 片足が下がってるので、思ったよりも安定している。これなら大丈夫。でも、ここから動けない。

 すると、彼は鉄棒の隣のスペースに乗ってきた。

「そしたらさ、そのまま後ろに倒れるんだ」

 そう言うと、彼は片足を掛け、両手で鉄棒を持ったまま、ふっと後ろに倒れてみせた。

 

 この技は、確か「半グライダー」と呼んで、鉄棒を掴んだ両手の間に右足を乗せてから飛ぶ技だった。彼はそのままくるっと回り、自然の法則に従って、綺麗な軌跡を描いて着地して見せた。

「あとは飛ぶだけだよ」

 まさに、彼の言うとおりに感じた。後ろに倒れたあとは、自然に任せていれば彼のように飛べるような気がした。