駆け抜ける森 見上げた空

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「少年時代」②慰霊塔と砂遊び

 新体育館の隣には、取り壊しや移設を免れた慰霊塔があった。

 その慰霊塔は、大きな石を積んだような小山の上にあって、周囲よりも少し高いところに建てられていた。塔の周りは大きな樹木に囲まれていて、その一郭だけは元々沼地だった校庭とはまた違う世界を創り出していた。朝は鳥たちが集まって歌い、夏には蝉時雨が辺りを包んだ。

  小学生の頃、そこは大好きだった場所のひとつで、いつも行く処ではないけれど、図画工作で絵を描くときなどは、よくそこへ行っていた。

 誰かと行くよりも、一人で行くのに良い処だった。一人静かに、鳥の声や虫の声、風に揺れる木々のざわめく音を感じているのが大好きだった。

 

 元々沼地だったので、校庭は広い方だったと思っていたけど、新校舎が建つまでの間はプレハブの仮校舎が並んで、校庭は狭く感じた。校舎を支える基礎杭は、地下30mの支持地盤まで打ち込むため、毎日打ち込みの工事が続いた。

 その中でも、サッカーをやっていた私は、仲間たちと暗くなるまでボールを追いかけた。校庭が狭くなっていたので、リフティングができた人が優先的に練習に参加でき、出来なかった人はグラウンドを走らされた。苦手だった私は、走っている事が多かった。

 今思えば、それが今の私の礎を作っていたのかもしれない。

 

 校庭のすみには砂場があって、サッカーの練習が終わってから遊んでいることもあった。

 大きな砂山を作り、その脇に大きな穴を開け、小さなボールを転がせるように作るのが好きだった。特に、山の途中にトンネルを掘って、その中を転がすのが好きで、よく作った。

 砂山の真ん中に穴を開けるのは、とても大変だった。砂を水で適度に湿らせるとよく締まって固くなったけど、やり過ぎると崩れた。その加減が難しかったけど、そこがまた面白かった。砂山の隣には大穴を掘って、ボールがより長く転がるように工夫した。

 そうして完成するのは、高さ50cmくらいの砂山の上から螺旋状にボールが転がり、途中砂山の真ん中に開けた穴をくぐり抜け、最後には砂山の脇に作られた深さ50cm程度の大峡谷にまで転がり落ちてゆく、壮大なジオラマだった。

 だいたいいつも同じになるのだが、毎日少しずつ技術を高めつつ、飽きもせずに遊んだ。