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駆け抜ける森 見上げた空

ツイッターで掲載中の『連続ツイート小説』おまとめサイトです。

「家路」②優先席と専用車両

家路~深夜の電車にて~

 電車には優先席というのがある。もちろん、御老人や妊婦さん、身体の不自由な方のために用意された席だ。優先席の前に立つと、大抵そこには「携帯電話の電源を切る」ことが書かれている。しかし、多くの人は平然と携帯電話を操作している。

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  なぜ、携帯電話は優先席では使ってはいけないのか、それは、その電磁波によってペースメーカーなどに影響があるから、と言うのが通説である。

 しかし、よくよく調べてみると、どうやら今ではそうでもないらしい。確かに、携帯電話が普及し始めた頃はそうだったようだが、今ではだいたい3cm離れていれば問題ないという話も聞く。

 外国のどこかの国では、ガソリンスタンドで携帯電話を使うと引火すると考えられていて、携帯電話をガソリンスタンドで使うことを禁じているらしい。そんなバカなと思うのだが、外国から見たら、この優先席での使用禁止も同じかもしれない。本当はどうなのか、それを明らかにして必要な対応をとってもらいたいものだと思う。

 

 この優先席だが、その存在意義はどの程度あるのだろうかと思うことが時々ある。

 先にも述べたとおり、本来優先席とは立っているのが大変な方に優先して座って頂くために設けられている、はずである。しかし、見ていると、一度座った人は、降りるまでまず立つことはない。

 それは、目の前に御老人や妊婦の方、杖をついたりギプスをしているような、明らかにその席を必要としている人がいても変わらないようだ。とても残念なことに、ここ東京では普通にあることなのだ。

 

 恐らく、東京の人は、日常的にストレスが多く、とても疲れているのだと思う。

 誰もが余裕がなくて、時分を守ることで精一杯なのだ。そして、競争社会で生き抜くことを求められるなかで、弱い者に対しても先ずは自分の権利を確保することを最優先してしまうのであろう。その結果、席を譲らないばかりか、動きの遅い彼等を押し退けて席をとる人も中にはいる。

 とても残念なことだが、この過剰な競争意識を煽る環境では、無意識のうちに自分の権利を守ることに意識が向いてしまうのも頷ける。その結果が、譲り合いの心を少しでも見せた途端、一歩も動けなくなり、後ろから突き飛ばされる環境を産み出すのだが。

 

 しかし、この過酷な環境に適応している、元気な御年配の方々もいる。

 他の人が並んでいるところに、どこからともなく現れて、スルッと順番をスルーする「スルッと爺さん」。或いは、仲間同士で会話しながら列に気付かないようにして、そのまま先頭に並ぶ「見ないふり婆さん」。

 彼らは電車に限らずコンビニなどあらゆる公衆施設に現れては自由に街を謳歌している。私がよく行く温泉施設では、彼らの余りにも奔放な行動に投書を重ねた結果、整列受付システムを勝ち取った過去がある。

 そのように、電車の席に不自由しない彼らだが、残念なことに彼らはとても元気で、彼らには優先席は必要ないのではと思うほどである。つまり、結局は本当に優先席が必用な方にまで、なかなか席が回っていない。

 ただ、席が埋まっていく様子を見ると、優先席は最後の方であり、その分だけは必用な方が座れる機会が増えてはいる。それだけでも、優先席の存在意義は少しはあるのかもしれない。

 ただ、混んだ電車の中で、いつまでも優先席が空いているのを見た事もある。どうやら、一度座った後に席を譲るくらいなら座りたくないらしい。やれやれ。

 

 優先席と似たものとして、女性専用車というのがある。

 女性専用車とは、その名前のとおり女性のための車両で、その存在意義は高いと思う。しかし、会社や線によってその位置が違うなど、初めて乗る電車では判り難いのは難点だ。

 以前、女性専用車と知らずに乗り込み、刺すような視線が集中するのを感じ、慌てて飛び降りた事もある。女性専用車であることを判りやすくするためには、どの鐵道会社もピンク色に塗装するなど判りやすい統一規格にするといい。そうすることで、気が付かずに乗るという不幸な事故は防ぐことができる。

 この女性専用車は、優先席と同様に御老人や身体の不自由な方は利用して良いとされている場合が多い。しかし、実際には病人や怪我人の男性が女性専用車に乗ることはないだろうと思われる。少なくとも、私が間違って乗り込んだときの空気は、そのくらい強烈なものだった。

 逆に、この原理を利用すれば、優先車両なるものを作ればどうだろうか。座席も、中距離列車用のように多くの人が座れるようにするとか、車椅子やベビーカーの方も乗りやすい空間を設定するのも良い。困った方々が利用しやすくするための工夫だ。

 一般の利用者も変な気を使わなくて済むし、一挙両得ではないか。ただし、この急速に高齢化が進むこの国では、そのうち殆どが優先車両になってしまう可能性もあるが。