駆け抜ける森 見上げた空

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「家路」①夜のホームにて

 今日もまた残業で帰りが遅くなった。一人駅のホームに立ち電車を待つ。この時間になっても都心では多くの人が行き交う。それでも、ラッシュの時間と比べれば圧倒的に少ないのだが、いつの時代に何を考えて作られたのかと思うくらいに人の数に比べて狭いホームにいると、どうしても人との接触を避けられない場合も多い。

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  電車を待つ列の一番前に並びながら、文庫本を読んでいることがある。ホームが狭いために、私と線路の間を通り抜けて行く人は多いのだが、時々文庫本にぶつかってしまう人もいる。面白いことに、何故かその数は圧倒的に女性、しかも若い方が多い。しかし、本が落ちるほど強烈にぶつかるのは間違いなく男性である。どうやら、様々な場所で女性は物理的にはソフトに、男性は直接物理的に働き掛ける傾向がここでも発揮されているようだ。

 割り込みをする場合でも、同様の傾向がみられる。もちろん、大多数の人はそんなことはしないのだが。

 通勤中には、特に強く感じるのだが、日本人には、既得権というのか、自分のテリトリーの所有を何気に主張する人が多いように思う。もっとも、外国人の場合がどうなのかは判らないが。駅に着いた時に混み合った通勤電車の扉の前で動かない人がいるのも、恐らくはそうなのだろう。

 電車に乗り込むと、この時間でも相変わらずの混雑である。朝も夜もこの混んだ電車で通勤通学をすること自体が間違っているとも思うのだが、この国ではそれが普通の事になっている。国家公務員がフレックスを導入する法案が通ったと聞いた気がするが、世の中は今のところ何も変わってなさそうだ。是非、公務員に率先して朝の混雑緩和に取り組んでほしいものだ。

 公務員と言えば、最近は役所の窓口も夜間や休日に開いているようになり、大分便利になった。一方、かつて平日の日中しか受け付けないことで双璧を成していた金融機関はキャツシャーの普及により24時間いつでも出し入れ出来るようになったが何かと理由をつけて手数料を取るようになった。

 機械を導入し維持管理することを考えればもっともなことではある。だが、こうも毎回のように手数料を取られると庶民としてはかなわない。

 もっとも、メインの取引先が大口の企業であり、そのついでに個人の取引も扱っている銀行の立場で言えば、そこまで歩み寄ったとも言えるのだろう。

 なかなか難しい話だ。