駆け抜ける森 見上げた空

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「みゃう」⑤はじめての夜

それからも、みゃうは毎日のように現れては、部屋のなかで寛いだり餌を食べたりして、また帰っていった。どこに帰って行ってるのかはわからないが、自分の飼い猫な訳でもないので放っておいた。

留守の時には、貢ぎ物も度々置いてあった。気味が悪いものが多かったが…

玄関先にあるものは、一度受け取ったあとで処分することにした。

 

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そんな、みゃうとの何気ない毎日が何ヵ月が過ぎた。

みゃうは、いつの間にか大きくなり、大きさで言えば成猫の一歩手前くらいの感じになった。

しかし、やることは相変わらずで天衣無縫に動き回っていた。

その、みゃうの無邪気な仕草は、まるで永久に子猫のままでいるような、そんな気になるようなものだった。

 

その日も、みゃうはいつものように部屋に上がってきた。しかし、なぜが帰ろうとせず、そのまま部屋のなかで眠り始めた。

しばらくの間、部屋のなかで穏やかな寝息をたて始めたみゃうを見ていた。どうやら、今日は帰る気はないらしい。

そう思ったら、急に周りの目が気になり始めた。そうだ。ここはペット禁止の部屋だった。

 

取り敢えず、部屋の片隅から小さな段ボールの箱を見つけ出し、みゃうのそばに置いてみた。

気配に気が付いたのか、みゃうは延び上がって箱の中を覗き込んだ。

そして、ひょい、と、箱の壁を乗り越えて中に入り込み、そのまま何事もなかったように、再び眠り始めた。

 

目の前の小さな段ボールの箱の中には、小さく丸くなったみゃうが、まるで何事もなかったように寝息をたてている。

私は、カーテンを閉めて、外から見えないのを確認してから、みゅうの箱の横に布団を敷いた。そして、部屋の明かりを消して、その中に潜り込んだ。

 

暗い部屋の中には、カーテンを通して外の灯りが薄く差し込む。時折走り抜ける車の光が、天井に弧を描き、そしてまた去ってゆく。

耳元には、段ボールの箱を隔ててみゃうが眠っている。手を伸ばせば届きそうなところにある、そのふわふわしたものに、ともすれば触れたくなる気持ちを感じていた。

でも。

今は静かに寝かせてあげたいと思い、二人だけの空間を楽しむことにした。

薄暗い静かな部屋の中に、みゃうと二人きり。

耳を澄ませば、みゃうの寝息が聞こえてくるような気がした。

そして、いつの間にか私も眠っていた。