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駆け抜ける森 見上げた空

ツイッターで掲載中の『連続ツイート小説』おまとめサイトです。

プロローグ⑤成長する迷宮からの脱出

そんな、息の抜けない都会の地下を抜けるために、私は地上を目指す。

確かに便利なのだが、私は、この地下通路があまり得意ではない。

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 どこにいるのかも分からないような閉鎖的な密閉空間に、過密とも言える数の人が行き交う独特な感覚が、どうやら私を長くは居たくない気分にさせるらしい。

そんな訳で出来るだけ早くここから脱出したいのだが、しかし、この駅の地下通路は、なかなか私にそれを許さない。ただでさえ入り組んだ造りである事に加えて、最近はあちこちで出入り口が閉鎖されていて、分かり難くなっている。

 

この駅の周辺では、「ドミノ式」という連続的なビルの再開発が行われており、それに合わせて地下通路の改造工事も行われているのが原因らしい。

ドミノ式再開発は、既に出来上がったビル街の再開発を連続的に行うための方法だ。

通常は今あるビルを壊してそこに新しいビルを建てるが、それではそのビルで営業している企業が困ってしまう。

そこで、一つの種地を利用し新しいビルを建て、古いビルの企業がそっくり新しいビルに引っ越した後、古いビルの取り壊しをする。その取り壊した後の土地を次のビルの建設用地として次の再開発をすることで、時間をかけて順に全てのビルの再開発が行われる。

東京オリンピックの頃には、おそらく、全ての工事が終わっているのだろう。

その頃には、この迷路のような地下通路も少しは快適で過ごしやすい空間になるのだろうが、仕方ないとはいえ工事の最中は迷惑以上のものではない。

 

私は、その「成長する迷路」のお陰でこれまでに3回変わった地上までの最短経路を経て、地上を目指す。

もうすぐ、曲がりくねった先の階段を上がればこの閉鎖的過密空間から解放されるはずだ。

階段の出口は東に向いているため、晴れの日には強い陽射しが射し込んでくる。逆に、雨のときは屋根がない解放口からは雨が吹き込んでくる。

幸い、今朝は良い天気だ。

季節によって変わる陽射しの向きが、今朝は割りと正面に近いところから射してくる。

眩しい。

毎日寒い日が続いてるけど、少しは春が近付いているらしい。