そんなことを思い出していると、再び車内がざわつき始めた。次の駅ではほぼ半数以上の人が入れ替わる。
私も降りる駅だ。
隣に残ったもう一人のLサイズの男性も、どうやら降りるらしい。私の後でLサイズの男性が座れば、彼らにも少しは私の気持ちが解って貰えるのにと思っても、大抵の場合、私と一緒か、先に席を立つ。そのことを、少し残念に思いながら私も降りる支度をする。
駅に着くと、降りる人が一斉にドアに向かって動き出す。
人と言うのは不思議なもので、たいして急いでいない人でも、少しでも人の前へ出ようと動く。その様子は、決して暴動が起こるような激しいものではないけど、押し殺されたような、一種の殺気だった空気を生み出している。
私はそれを適当にかわしながら下車の列に加わる。
そういえば、希に開いたドアの前で動かない人がいる。
何故動きたくないのかはわからないけど、そこがまるで自分の居場所だと言わんばかりに頑張る人がいることがあり、その後ろで降りるべき人が滞ることになる。
そこへ発車のベルが追い討ちをかけるので、今度はそこに乗ろうと待っていた人たちがなだれ込む。
そうなると、まさに一触即発のような状況になるのだが、それでもドアの前の人はそこから動きたくないらしく頑張っている…。
幸い、今日は「ドアの前の人」はいないようだ。
降りる人同士で互いを牽制しつつ順番に歩いていると、案の定、発車を知らせるベルが鳴る。すると、やはりそれまでドアの外で待機していた人たちが、降りる人を掻き分けて乗り込み始める。なんで降りる人が降りないうちにベルを鳴らすのか判らないが、これもこの国の文化らしい。
なんとか扉を出て、周囲と絶妙な距離を保ちながら改札口を目指す。
改札口までの間も、階段やエスカレータの手前で、ちょっとした「先陣争い」がある。
歩くのが遅い人でも、取り敢えず人の前へ出たいものらしい。ホームを抜けた先では、更に前や横からも人が来るので、自分の進路を発信しつつ周囲の動きを読みながら歩く。