駆け抜ける森 見上げた空

ツイッターで掲載中の『連続ツイート小説』おまとめサイトです。

『みゃう』~子猫物語~

「みゃう」⑮番外編 雨の日

「みゃう、ただいま」 部屋に戻ると、いつもなら玄関までお迎えに来るのだが、今日はいない。 「みゃう?」 中に入り、部屋の中を見渡してみた。 …いた。 みゃうは、掃き出しの窓の下で、窓を伝う雨の滴を夢中で追いかけていた。 (番外編)

「みゃう⑭エピローグ

病院から戻ると、珍しく大家さん夫婦がアパートの前に来ていた。 どうやら、新しく入居する人の部屋を確認していたらしい。 挨拶をすると、奥さんからは元気な声が、大家さんからは相変わらずの控え目な笑顔が返ってきた。 私は、先日見た不思議な猫の話をし…

「みゃう」⑬春の幻

みゃうがいない夏は、あっという間に過ぎていった。 秋になり、次第に木々の葉が色づき、風に舞う様子を、誰もいない部屋の中から眺めた。 やがて、冬枯れの木々を冷たい北風が揺らすようになっても、それは変わらなかった。 そして、季節は流れ、また、春が…

「みゃう」⑫旅立ち

それから、一瞬だけ、意識が飛んだように思う。 気がついたら、部屋の中には、カーテンを透して薄明かりが差し込んでいる。 目の前には、静かにうずくまるみゃうがいた。

「みゃう」⑪闘病

タオルでくるんだみゃうを抱いて、アパートの部屋に入った。 その途端、堪えていたものが溢れだした。 みゃうを抱き、立ち尽くしたまま、私は動けずにいた。 ただ、涙だけが流れ落ちて行く。 頬をつたった涙が、みゃうの上に落ちる。 みゃうが、みゅ、と、小…

「みゃう」⑩病院へ…

なんで…? 様々な思考が交錯して、どうしたらよいのか判断できずに、そのまましばらくしゃがみこんでいた。 目の前では、相変わらずみゃうがうずくまっている。 そうだ。病院に連れていかなきゃ。

「みゃう」⑨発病

その日は、夏も後半に差し掛かった、よく晴れた金曜日だった。 昼間の強い日差しも緩んだ夕方、繁華街へと向かう仲間の誘いも緩く断り、家への道を急いでいた。 途中、少し食欲が落ちたみゃうのために、猫缶などを買うのは忘れなかった。 涼しくなった風が心…

「みゃう」⑧予兆

その日は少しワクワクした気持ちで歩いていた。 今朝のようなこともあるかと思い、帰りに寄り道して猫用のトイレなどを買い込んできたのだ。 これでまた少し、みゃうの飼い主に近付いたような気がして、楽しいような、嬉しいような、なんだかバカみたいだけ…

「みゃう」⑦初めて触れた日

戸を開けて、中に入ろうとすると、何かが足元をすり抜けた。 みゃうだ。 私は慌てて扉を閉めた。 今の様子を奥さんに見られてないだろうか。そう思うとドキドキだった。 「おまえ、どこにいたんだよ」 今まで、その辺の茂みにでも隠れていたのだろうか。それ…

「みゃう」⑥大屋さんの奥さん

目が覚めると、みゃうはもう段ボールの箱から出ていた。 どこにいるのかと部屋の中を見回してみると、窓の下の薄日が差し込む辺りに動くものがある。後ろから光を受けて、ふわふわした輪郭が浮き上がっている。 みゃうだ。 起き上がった私を見て、みゃうは、…

「みゃう」⑤はじめての夜

それからも、みゃうは毎日のように現れては、部屋のなかで寛いだり餌を食べたりして、また帰っていった。どこに帰って行ってるのかはわからないが、自分の飼い猫な訳でもないので放っておいた。 留守の時には、貢ぎ物も度々置いてあった。気味が悪いものが多…

「みゃう」④命名

その子猫は、私を見かけると、私を見上げて、みゃう、と鳴いて、身体を私の足などに擦り付けたあと、その辺を歩き回ることが多かった。 かといって、部屋のなかで騒いだり、散らかすこともなかった。

「みゃう」③子猫の貢ぎ物

それから、その子猫との交流が始まった。掃き出しの窓を開けていると、その猫は部屋のなかに入ってくるようになった。パンはあまり好きではないらしかったので、カリカリのキャットフードを買ってきて、いつでも食べれるように部屋のなかに置いた。

「みゃう」②子猫との出会い

その頃住んでいたのは、アパートの一階だった。1Kの簡単な部屋は南向きで、道路から少し入ったところにある部屋の前は、中からはちょっとした庭のように見えた。 その庭のような空間は、町中の連なったアパートの部屋の前であるにもかかわらず、周辺から切り…

「みゃう」①猫の恩返し

このところ、ペットを飼う人が増え、家族のように一緒に生活する家庭が増えているらしい。とくに、猫が人気らしく以前は犬と半々だったのが現在では猫の方が圧倒しているとも聞く。 この猫については、可愛い話や面白い話はもちろん多いが、時に不思議な話を…