駆け抜ける森 見上げた空

ツイッターで掲載中の『連続ツイート小説』おまとめサイトです。

サラミと僕と ③初めてのお出かけ

 僕は部屋を出ると、アパートを振り返った。

 ここの良いところは幾つかある。

 古いけどきれいなこと。

 小さいけど専用の庭がついてること。

 駐車場がついてること。

 他を知らないけど、大家さんもいい人だと思う。

 もし、サラミが大きくなったら、あの庭で飼えるかな?

 僕は車に乗り込むと、助手席の足元に持っていたタオルを広げ、その上にサラミを置いた。

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サラミと僕と ②二人暮らし

 アパートに着くと、サラミを部屋に下ろしてやった。

 サラミは、早速そこら辺の匂いを嗅いで探索を始めている。

 どうやら、好奇心も強いらしい。

 さて、まずは水と餌入れか。

 友人のメモによると、軽い入れ物はすぐに引っくり返るので重いほうがいいらしい。

 取り敢えず、少しでも重そうな瀬戸物の器に水を入れて床に置いた。

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サラミと僕と〜Life with a dog〜 ①サラミ

サラミは僕が飼っている犬の名前だ。

なぜサラミかと言っても、特別な理由はない。

初めてこいつの顔を見たときに、なんとなく浮かんだのだ。

それに、本人も気に入っているようなので、そう呼ぶことにしている。

その証拠に、名前を呼ばれると激しく尾を振って嬉しそうだ。

このサラミと出会ったのは、友人の家に遊びに行ったときの事だ。

 

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ゴールデン・ダスト ⑤街灯

 やがて、周り中の世界を黄金色に輝かせていた夕陽が、遠い町並みの向こうへと消えて行き、その最後の赤い光が届かなくなると、辺りは夜の街へと姿を変えていった。

 黄金色に輝く奇跡の時間は、日没と共に終わりを告げ、風も治まった園内は、静かな空気に包まれていた。

 ポツポツと街頭に照らされた部分だけがまるでスポットライトを浴びたかのように浮かび上がっている。

 時折、緩やかな風が道の上の落ち葉をかさこそと音をたてる。

 その中を、二人並んで歩いた。

「今日はたのしかったな」

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ゴールデン・ダスト ④黄金色の時間

 次の瞬間。

 突然、強い風が吹いた。

「え…」

 地面に積もっていた落ち葉が舞い上がり、枝に残っていた葉は一斉に樹々を離れ宙を舞う。

 折からの夕陽に照らされて、空中で輝く黄葉。

 ゴールデン・ダスト。

 銀杏のゴールデン・ダスト。

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ゴールデン・ダスト ③並木道

 広い園内の一番奥には、銀杏の並木道がある。

 その並木道は、まさに今がそのピークとでも言うかのように、地面に近いところから枝の先端まで樹々の葉が黄色く染まっていた。

 そして、地面の上には、やはり黄色く染まった葉が降り積もり、辺り一面が銀杏の色に包まれている。

 遠く西の空からは、夕陽が黄金色の光を投げ掛け、その空間は、上から下まですべてが黄色く輝く世界になっていた。

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ゴールデン・ダスト ②都市公園

「うわぁ…」

 広い園内は、まるで日本中の秋を集めてきたかのように、見事に染まっていた。

「すごいね」

「ほんと、ね」

 頃よく傾いた陽射しが、園内に黄色い光を投げかけ、赤や黄色に色付いた樹々や、空気までも黄金色に染め上げている。

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