駆け抜ける森 見上げた空

ツイッターで掲載中の『連続ツイート小説』おまとめサイトです。

「みゃう」⑬春の幻

みゃうがいない夏は、あっという間に過ぎていった。

秋になり、次第に木々の葉が色づき、風に舞う様子を、誰もいない部屋の中から眺めた。

やがて、冬枯れの木々を冷たい北風が揺らすようになっても、それは変わらなかった。

そして、季節は流れ、また、春が来た。

 

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「みゃう」⑪闘病

タオルでくるんだみゃうを抱いて、アパートの部屋に入った。

その途端、堪えていたものが溢れだした。

みゃうを抱き、立ち尽くしたまま、私は動けずにいた。

ただ、涙だけが流れ落ちて行く。

頬をつたった涙が、みゃうの上に落ちる。

みゃうが、みゅ、と、小さく鳴く。

どうして…!

そのまま部屋のなかにしゃがみこみ、みゃうをくるんだタオルに顔を埋めて泣いた。

 

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「みゃう」⑩病院へ…

なんで…?

様々な思考が交錯して、どうしたらよいのか判断できずに、そのまましばらくしゃがみこんでいた。

目の前では、相変わらずみゃうがうずくまっている。

そうだ。病院に連れていかなきゃ。

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「みゃう」⑨発病

その日は、夏も後半に差し掛かった、よく晴れた金曜日だった。

昼間の強い日差しも緩んだ夕方、繁華街へと向かう仲間の誘いも緩く断り、家への道を急いでいた。

途中、少し食欲が落ちたみゃうのために、猫缶などを買うのは忘れなかった。

涼しくなった風が心地よかった。

 

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「みゃう」⑧予兆

その日は少しワクワクした気持ちで歩いていた。

今朝のようなこともあるかと思い、帰りに寄り道して猫用のトイレなどを買い込んできたのだ。

これでまた少し、みゃうの飼い主に近付いたような気がして、楽しいような、嬉しいような、なんだかバカみたいだけど、そんな気分だった。

 

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「みゃう」⑦初めて触れた日

戸を開けて、中に入ろうとすると、何かが足元をすり抜けた。

みゃうだ。

私は慌てて扉を閉めた。

今の様子を奥さんに見られてないだろうか。そう思うとドキドキだった。

「おまえ、どこにいたんだよ」

今まで、その辺の茂みにでも隠れていたのだろうか。それにしては、よく見つからなかったな。

 

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