駆け抜ける森 見上げた空

ツイッターで掲載中の『連続ツイート小説』おまとめサイトです。

「みゃう」⑥大屋さんの奥さん

目が覚めると、みゃうはもう段ボールの箱から出ていた。

どこにいるのかと部屋の中を見回してみると、窓の下の薄日が差し込む辺りに動くものがある。後ろから光を受けて、ふわふわした輪郭が浮き上がっている。

みゃうだ。

起き上がった私を見て、みゃうは、みゃっと鳴いた。

いつもなら、私を見かけると寄ってきて身体を擦り付けるのだが、今朝は窓の下から動こうとせず、こちらを見ている。

そうか、トイレに行きたいのかな。

掃き出しの窓を開けると、ひょいっと飛び降りて、そのままどこかへ駆けていった。

 

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「みゃう」⑤はじめての夜

それからも、みゃうは毎日のように現れては、部屋のなかで寛いだり餌を食べたりして、また帰っていった。どこに帰って行ってるのかはわからないが、自分の飼い猫な訳でもないので放っておいた。

留守の時には、貢ぎ物も度々置いてあった。気味が悪いものが多かったが…

玄関先にあるものは、一度受け取ったあとで処分することにした。

 

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「みゃう」③子猫の貢ぎ物

それから、その子猫との交流が始まった。掃き出しの窓を開けていると、その猫は部屋のなかに入ってくるようになった。パンはあまり好きではないらしかったので、カリカリのキャットフードを買ってきて、いつでも食べれるように部屋のなかに置いた。

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「みゃう」②子猫との出会い

その頃住んでいたのは、アパートの一階だった。1Kの簡単な部屋は南向きで、道路から少し入ったところにある部屋の前は、中からはちょっとした庭のように見えた。

その庭のような空間は、町中の連なったアパートの部屋の前であるにもかかわらず、周辺から切り離されたような、静かで不思議な空間に感じた。

晴れた日には、太陽の光が静かに降り注ぎ、まさに言葉のとおり日溜まりになっていて、暑い夏の日には、向かいの家の木々によって丁度良い具合に木陰ができた。

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「みゃう」①猫の恩返し

このところ、ペットを飼う人が増え、家族のように一緒に生活する家庭が増えているらしい。とくに、猫が人気らしく以前は犬と半々だったのが現在では猫の方が圧倒しているとも聞く。

この猫については、可愛い話や面白い話はもちろん多いが、時に不思議な話を聞くこともある。

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プロローグ⑦そして、街路樹

ビルの合間を抜けてきた北風に吹かれながら、最近出来た小さな森の前を過ぎる。

この森も、周辺の連続再開発の結果生まれた成果だ。

明治神宮の森は、木が成長した50年後や100年後の姿を想定して創られたものらしいが、ここはどうなんだろうか。その頃には、また周辺の連続再開発を始めるだろうから、この森はそのための種地として計画されているのかも知れない。だとしたら、計画的な都市開発ではあるが、ちょっと残念な気がする。

 

交差点を渡ってくる人の群れを避けながら歩く。見上げれば、いつもの標識。

そして、街路樹。

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